平成23年1月20日 新潟日報掲載

温度調整が出来を左右 鍛冶職人 森本鋼吉さん(77歳) 村上市久保多町


コークスの熱と煙が満ちる作業場。真っ赤に焼けた鉄にハンマーを振り下ろすと、カーン、カーンと金属音が響く。

熱した鉄を手作業でたたき、包丁や鎌などの刃物に仕上げる伝統的な鍛冶の手法だ。中学校を卒業して、すぐに父・春吉さんへ弟子入り。
キャリアは60年を超える。「昭和初期には5〜6件あった鍛冶屋も、いまでは俺一人しかやってないんじゃないかな」と話す。

刃の部分となる鋼を熱した鉄の地金に合わせ、一日かけてたたいて引き延ばす。800〜900度に達したコークスの火力を調節し、鉄を適正な温度にするのが職人の技術。鉄を熱し過ぎると、合わせた鋼は使い物にならない。たたいている最中に、刃物がわれたりすることもあるという。

鉄は生き物のように変化する。一つ一つで厚みが違い、薄さによって熱の伝わり方も違ってくる。「熱すると鉄が真っ赤になるが、熱しすぎると黄色に変わる」。完成するまで神経を使う作業の連続だ。

出来上がりを研ぐと、切れ味鋭い刃物が完成。手作業で仕上げた逸品を求め、板前などプロの調理人から注文が入る。

2年前、孫の昌典さん(23)が弟子になった。一人前になるためには5〜10年の期間がかかる。「何とかして、一人前の鍛冶職人にしてやりたい」